翻訳について・お知らせ

ネイティブチェックの落とし穴

 翻訳について、ネイティブチェックという言葉を当たり前のように目にします。本サイトで日英翻訳をさせていただく場合にもネイティブチェックを通しますので、若干書きづらい内容ではありますが、英語を母国語とする方によるネイティブチェックも万全ではありません。これには二つの理由があります。
 まず、冒頭で書かせていただいたように、母国語の書き手であっても、その文章は万全ではない場合があるからです。日本語を母国語とする人の書く日本語の文章が多種多様であるように、英語を母国語とする人の書く英文も様々です。ただ、ネイティブによる日英翻訳サービスや、依頼者の書いた英文にネイティブチェックをかけるサービスを提供する場合は、文章のプロと言える方がチェックをしていることが多く、この点に関しては、情報の信憑生さえ見極められれば、大した問題ではありません。
 二つ目の理由が問題です。文章のプロと言えるネイティブの方でも、プロと言えるのは英文に関してであって、日本語はそこまでのレベルではない場合があるように思います。日本語の読み込みが甘い場合があるのです。出来上がってくる英文自体はきちんとしていても、もとの日本語と読み比べると、案外、日本語の解釈に問題がある場合があります。一番わかりやすいのは、日英翻訳をする場合の起点言語の日本語の構文がねじれていたり、文として成立していなかったりする場合です。これは、英日翻訳やその他の言語でも言えることですが、読み込みが甘い分、全体を常識と雰囲気でとらえている場合があります。構文がねじれていたり、文として成立しないものは、私的な内容であることが多く、内容についての事実を確認する術や発想がないために見過ごされてしまうこともあるのではないかと思います。加えて、依頼する方が元の日本語にこだわりをお持ちでない場合もあるかもしれません。
 さて、IT時代と言われる現代、翻訳サービスはウェブサイトを介して、早く、安く、提供されるようになりました . . . という印象があります。「早く、安く」のサービスがあるとすれば、もちろんよいサービスです。依頼する方々にとって、選択肢が広がるのはよいことだと思います。ただし、否定的に聞こえてしまうことは本意ではないので、あまり詳しくは書きませんが、そのようなサービスが功を奏するのは、「簡単な文の翻訳を早く安く仕上げる」という場合ではないかと思います。一般論として書かせていただくと、依頼する文章量が多い場合はもちろんのこと、読解に技術やコツを要する内容である場合は、早く仕上がることはありません。また、大抵の場合、内容が特別なものであれば、結局はそれなりの料金を支払うことになります。
 話を戻しますが、翻訳であろうと単なる母国語の作文であろうと、いいものを仕上げるには時間がかかります。「安く」はともかく、「早く」には限界があります。